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第7回 高須大会
熱き戦いが始まった。早くも会場はむせ返るような熱気に包まれ、山口県から馳せ参じた全国赤旗準名人の田中選手も扇子を開いて頭を冷やす。これに対するは広島県のホープ、三浦選手。 |
41人が殺到した受付は、多忙の中時間を裂いて駆けつけた越智さんの正確無比の対応で無事終了した。写真は、受付作業を終えてホッとしている呉から大会運営実務のために駆けつけた小川幹事。手にしているのは参加する選手名が丁寧に書き込まれた受付名簿。「きれいな字だね」と感心することしきり。大会の準備に大わらわの谷野席主の姿を見かね、奥様が救いの手を差し出された結果と知り小川幹事も納得の様子。 |
決勝トーナメント第二回戦。ベスト16に名を連ねたのは、田中佳久・川崎龍玖・新谷功太・宮瀬賢伸・北村公一・三浦信寿・藤岡大悟・藤川清美・中野博文・峯政浩実・小笠原嗣人・松田竹二郎・曽川広人・渡邉文雄・板垣剛二・熊谷安剛の各選手である。勇名を轟かせる強豪がずらりと並んだ。 |
息も詰まりそうな激戦を勝ち抜いてベスト4が出揃ったのは5時半だった。30分切れ負けで戦ってきたが、準決勝からは持ち時間20分の秒読み30秒となった。手前が峯政浩実対熊谷安剛、向こうが三浦信寿対田中佳久戦である。 |
三浦は得意の三間飛車で田中に立ち向かった。三浦の捌きを封じようとする田中。盤上は熱い戦いとなったが、三浦が飛車の捌きに成功、敵陣深く2九龍を実現したのに対し、田中が7九歩と金底ならぬ玉底の怪しげな歩を打ったところ。後手、三浦が指しやすくなっているのは自他ともに認めるところだが、ここからの田中はじっと我慢の決め手を与えない指し方に徹し、最後はついに形勢をひっくり返してしまった。「・・・相手がいくら田中さんでも、これはもらった・・・」と思った三浦だったが、手中から勝利がスルリと滑り落ちて行った。 |
心ならずも“三途の川”戦に入っていくことになったとは言え、闘志を萎えさせることなく食い下がって、決勝に残ったのは新進気鋭の東岡拓海と山口の強豪青木肇の両選手だった。僅かに経験の差がものを言って青木選手が優勝した。 |
鷹取新呉名人は、この日学校の発表会で、高須大会は無念の欠場だった。それでも終わるとすぐにお父さんといっしょに高須大会会場に駆けつけた。北村公一氏がこれをみつけてさっそく対局。北村氏の熱意も尋常ではなく、何局も指導が続けられた。その指摘はなかなか的確で、特に中盤で、局面をどう見るか、どういう手を追求して行くべきか、鷹取少年にとってありがたい貴重な体験となったようである。 |
準決勝のもう一局は相横歩取りの難解な将棋を先手の熊谷が制した。3位決定戦は峯政浩実・三浦信寿で戦われた。左手を畳について左に傾こうとする体を支えている三浦の姿勢から、準決勝の対田中戦がいかに過酷なものであったかがわかるが、この対局も敢無く負けてしまった。 |
決勝は熊谷・田中戦。先手熊谷選手の居飛車に、後手田中選手は左金を3二金と上がる向かい飛車で対抗、急戦となって、早々と飛車角の交換となる大立ち回りとなった。と金をつくられた後手田中選手が猛攻をしかけ、これをしっかりしのごうとする熊谷選手。紙一重で猛攻をしのぎ切ったかに見えた熊谷玉であったが、玉の逃げ場所を誤り、攻めの拠点のと金と玉の両取りに角を打たれて形勢は逆転、田中選手の優勝が決まった。 |
表彰直後の3選手。左から、3位峯政浩実、優勝田中佳久、2位熊谷安剛の各選手。終わって見れば、“三途の川”戦の青木 肇選手も含めて、山口県勢の大活躍した大会であった。 |