高須道場の一番長い日
6月最後の例会(6/23)
昼の長さが1年で一番長い日、夏至の翌日は、高須道場の一番長い日だった。名人戦・王将戦の決着の日なのだ。19人が集まって熱戦・激戦を繰り広げ、悲喜こもごもの結末を迎えた。
写真ニューストップにもどる9時前、「おはようございます」と元気よく顔を出したのは、こども教室の結田駿一9級。谷野席主「あれ?今日は臨時幹事会するんで、子ども教室は休みだと連絡しておいたはずなんだがなぁ。でも、来てしまったものはしょうがない、後で指導するから頑張るんで!」と激励。「ハイ!」と結田。彼はこの8月までに8級に昇級する目標を掲げているのだ。 こども教室メンバーはその後も続々登場した。谷野の言う「休み」の連絡が本当にされたのかな?と疑問を強く感じたが、楽しいからどんどんこどもたちが集まってくるということもあるのだろう。写真は先ほどの結田に東岡拓海・愛美兄妹も加わっての練習将棋がはじまるところ。 左・藤井、右・初田が激突した名人戦。藤井はこれが第一局目、初田は今期既に2勝を挙げている。朝の段階で1位が貫島名人で9勝、2位が石井の7勝、3位が小林の6勝なので、今日の成績如何では上位に食い込むことは十分に可能だ。
結果は藤井が勝って今期まず1勝目。
こちらでは、王将戦。A級の山口に、B級でA級への昇級の懸かった激しい優勝争い真っ只中の中野が角を落としてもらって挑戦した。局面は、中野が角金交換ながら山口陣内に竜を侵入させて、大いに健闘している。このあと山口も変幻自在に手を繰り出したが中野が勝利をつかんだ。 幹事会を終えた迫田、対局場に姿を見せる。名人戦B級で7戦全勝で優勝争いの真っ只中にいる。B級の成績表から、すでに会場に到着の藤里との対局が未対局であるのを確認している。下から愛美ちゃんが見上げている。「私も早く強くなって、この表に名前を書いてもらうんだ!」と思ったに違いない。 11時が近くなると参加者が増えてきた。
手前は、熱心にこどもたちを指導する谷野と、「なるほど」と聞き入るこどもたち。
向こうの方では、対局中あれば、対局待ち、昼の弁当を何にするかメニューで検討する者もいる。右は、弁当代を持って駆け寄る初田に、お金を入れる箱を指差す山口。右奥では名人戦B級迫田・藤里戦が始まっている。
名人戦A級でまだ1勝でB級への陥落の恐れが消えていない山口(右)、この日は精力的に対局した。すでに2勝で残留がほぼ確実な初田も積極的に応じた。
その向こう、迫田(左)・藤里戦は、迫田が勝って、8戦全勝でB級の優勝争い単独トップに躍り出た。正午頃の様子。手前の初田・山口戦は、勝利への切実さがより大きかった山口が勝って、A級残留をほぼ確定させた。
その向こうはB級名人戦の全勝対決、左が8戦全勝の迫田に、右が7戦全勝の坂本。結果は坂本が勝って8勝が2人並び、優勝争いはさらに加熱してきた。午後1時過ぎ、写真奥は、A級残留ほぼ確定の勢いに乗り、藤井に挑戦の山口。
手前は、名人戦、まだ片目が開かず、降級の“死神”にしつこくつきまとわれる黒原が、初田に挑戦した。1勝しさえすれば、対局数は十分なので、降級を免れる可能性が出てくる。しかし、結果は非情、片目はまだ開かず、厳しい戦いが続く。
写真には写っていないが、この直後、B級名人戦の坂本(8勝)・中野(7勝2敗)戦が行われた。勝った方が優勝となる一局は、雁木対風車の戦型となり、中盤坂本が仕掛けて激戦となった。中野、恐れる必要のない飛車金両取りを恐れたのが悪く、形勢を次第に損ねて敗れた。局後山口が指摘したが、両者とも両取で読みを打ち切っていた。もう一手読めば簡単にわかることだった。中野は惜しい将棋を落とし、昇級も逃した。B級は優勝・坂本、準優勝・迫田の2人が昇級となった。
午後2時前になった。久しぶりに顔を見せた板垣に香落ちで挑戦の藤里。結果は上手、板垣の勝ち。 時計は午後2時を回ったところで、重鎮、柿本が登場した。谷野席主、早速笑顔の出迎えに、腰をおろし、まずはお茶を一口の柿本。8月12日(日)岡山市で開催される菅井竜也杯将棋大会への参加を呼びかけた。 午後2時半、リーグ戦もあと少しで閉幕というときになって、板垣が名人戦の対局をすると名乗り出た。板垣にとっては負ければ降級必至の冒険の行動だが、黒原にとっては願ってもないチャンス到来である。「対局しなければ降級はないけれど、対局する以上、負けたら降級ほぼ確実になっちゃいますよ」の“助言”に、「うん、降級したほうがいいんですよ」と全く意に介さない様子の板垣。この堂々とした態度が勝利を呼んで板垣、名人戦で貴重な1勝。黒原の苦闘は続いた。
写真奥はこの日名人戦で4勝挙げて上位を狙う藤井が柿本に挑戦している。しかし、結果は柿本が勝って貫禄を示した。時々刻々と伝えられる棋聖戦羽生・中村戦の指し手を継ぎ盤に再現して検討する貫島・山口。早々に羽生優勢と結論を出してしまう貫島だった。 王将戦は13勝で、石井の14勝に遅れをとっている貫島、優勝するにはさらに勝ち星が欲しいところ。山口に飛香を落として戦った。 午後3時前であった。これまでになく、対局に執念を燃やす少年が出現した。すでに10勝ラインに到達した藤本である。王将戦の成績表を見て、少し勝ち込めば3位、いや2位、優勝も夢でないことに気づき、俄然対局に熱が入り始めた。三浦(6枚落ち)に挑んだ。(結果は藤本勝ち) 午後3時半。熊谷も駆けつけて、会場はいよいよ熱くなってきた。エアコンが入れられるほどだ。左奥の王将戦、貫島(飛香落ち)・山口戦は山口が勝った。R点差が大きく広がったため厳しい手合いとなり、貫島そう簡単には優勝させてもらえない。 時刻は4時前となった。今期は面白いように勝てる!自信を深め、勢いに乗って柿本(6枚落ち)に挑戦した藤本だった 手前、坂本(飛香落ち)・槇林の王将戦。坂本勝ち。
坂本の後ろを歩くのは清田。彼も最終日になっていつもより熱心に盤に向かった。決着をできるだけ混沌とさせたいのだそうだ。
この坂本を上回るペースで猛烈に勝ち込む藤本、向こうで柿本に挑んだ結果は・・・さすがは柿本、老獪な指し回しで藤本を一蹴してしまった。
しかし、藤本は最終日7勝して最終成績13勝4敗で4位の坂本の9勝に大差をつけて堂々の3位入賞を果たした。午後4時。藤井、5勝目めざして貫島名人に挑戦した将棋が終わる。貫島が勝って10勝目を挙げた。 午後4時過ぎ、熊谷・藤井戦が始まった。これは熊谷が制した。藤井は名人戦4勝の後、星が伸びなくなった。さすがに粒ぞろいのS級である。 午後5時前、棋聖戦の検討は続いていた。勉強になるね。 午後5時過ぎ。対局場前に咲く紫陽花が鮮やかだった。 午後5時15分。終わりが近くなって対局場はごった返してきた。 午後5時半頃、谷野席主が公式戦の「オーダーストップ」(以後新規対局は認めない)を宣言した。そのとき、王将戦の14勝目を狙って三浦との飛香落ち戦を戦っていた貫島の顔に笑みがこぼれた。「これを勝てば優勝できる」と。三浦は、飛香を落としてもらって負けるのか?という顔をしていたが、それこそ貫島の思う壺、盤面は、貫島の角・銀・二枚桂が5七に集中して、かなり容易ならざることになっていた。6時を回った頃、三浦が投了、貫島の逆転優勝が決まった。三段に飛香落ちもザラという超厳しい手合い割りにもかかわらず優勝を勝ち取った貫島、その強さは本物である。一方、14勝して優勝に最も接近していたが、この日文化祭で参加できなかった石井にとって、14勝同士ながら対局数差で優勝を逃す極めて残念な期となった。
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